原作を忠実に再現した新たな舞台で描かれるムーミンの世界『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』プレイレポート

朝比奈 / Asahina

2024/03/09

2024/05/26

本稿は事前にレビューキーをご提供いただき、執筆しています。

スナフキン:ムーミン谷のメロディ』は、ムーミンシリーズの主要キャラクターの1人であるスナフキンを主人公に、音楽を使ってムーミン谷の平和と調和を取り戻すアドベンチャーゲームだ。ノルウェーのオスロを拠点とする、インディーゲーム開発スタジオ"Hyper Games"が手掛ける。

フィンランドの作家トーベ・ヤンソン氏が描いた、世界的に愛されている著名な作品『ムーミン』シリーズ。小説、漫画、絵本、アニメ作品など多くの媒体で展開されてきたが、本作ではそうした原作をもとにゲームオリジナルのストーリーが展開されていく。

Snufkin: Melody of Moominvalley

スナフキンを主人公に描かれる新たな物語

シリーズの代名詞でもあるムーミントロールたちは、冬になると冬眠してしまう。本作は、そんな時期を離れて旅に出ていたスナフキンが、春の訪れとともにムーミン谷に戻ってくるところから物語は始まる。

そう、今作はムーミンではなく、タイトルのとおりスナフキンこそがプレイヤーの操作する主人公なのだ。原作にも彼を主軸とするエピソードはあったが、ゲーム作品として実際に彼を操作できるこの日が来たことは、なんとも感慨深い。

ひと冬を外で過ごし、馴染みの友人たちとの再会を心待ちに戻ってきたスナフキンだったが、谷の様子がどこかおかしい。そこかしこに無粋な立て札があり、自然を抑えつけて整備された「公園」が広がっていた。

新しい谷を作るのだという"公園番"と、彼に従う"警察官"の姿を目撃したスナフキンは、ムーミン谷をあるべき姿へと戻すべく奮闘していくこととなる。

普段クールで理性的な印象のあるスナフキンだが、シリーズファンの方はご存知のように、実のところ反骨精神にあふれる一面を持っている。自由を愛する彼にとって、彼自身やなにかに対して制限や縛りを生む規則などといったものには強く反発するのだ。それは信念と言い換えてもいい。

日本向けの「ムーミンシリーズ公式Webサイト」にて、そうした特徴的なエピソードが紹介されているので、併せてご覧いただくとより彼の人となりを理解できると思う。そうした意味でも、原作の世界を忠実に再現している物語なのだ。

ムーミン谷の異変を解決していこう

本作のゲームシステムは、スナフキンが公園をはじめとして、ムーミン谷で起こっているさまざまな異変を、住民たちやそこかしこに棲む生き物たちと関わり合いながら解決していくものとなっている。

オープンワールドというほどにどこまでも探索できるわけではないが、行動範囲は意外と広く、原作で見たような風景や、ムーミントロールたちはもちろんのこと、スニフリトルミイといった馴染みのあるキャラクターたちと出会えるのも嬉しいところ。

▲馴染みのある風景や、主要なキャラクターと出会えるとより気分が盛り上がる

また、スナフキン愛用のハーモニカなどの楽器を奏でることで住民や生き物たちの反応を引き出すことができる。例えば、水に棲む生き物に川の向こうに運んでもらったり、後についてきてもらって高台に登る足場になってもらったりという簡単な音楽パズル要素も用意されている。

いずれにしても、ゲームとしての歯ごたえよりも世界観の表現が重視されていると感じるので、普段あまりゲームに触れることのない方でも物語に集中して楽しめるのではないだろうか。

自然のあるべき姿を取り戻そう

今作の中心的な出来事である公園に立ち向かうパートでは、園内を警備する警察官の目をかいくぐって立て札を引っこ抜いたり、石像を倒したり、ときには誰かの助けを借りて警察官を追い出したりしていく。

警察官は巡回していたり、一箇所に留まって周囲を見回していたりするが、動きも遅めで視線も見えるようになっているので比較的簡単に出し抜ける。もし見つかってしまっても、ペナルティもなく少し前に戻されるだけなので安心してほしい。

ときには植木に身を隠し、ときには音楽で誘導した鳥に注意を引いてもらいながら、どんどん進めていこう。最終的に園内での目標を達成すると短いカットシーンが流れ、公園はきれいさっぱりなくなる。

そうして、抑えつけられていた森はやがて元の姿へと戻っていくのだ。

▲思い切りよく公園を壊していくスナフキン

ムーミンという作品を表す忠実な翻訳

▲アニメ版のキャラクターたちの声が聴こえてくるよう

国内外のインディーゲームのパブリッシングサポート、および、パブリッシングを担う「架け橋ゲームズ」のサポートタイトルである本作。翻訳は、同社のローカライゼーションマネージャーを務める桑原 頼子氏が担当されている。

日本においても親しまれている『ムーミン』という作品には、キャラクターのセリフ1つとってもファンが思い描く共通のイメージというものがある。感覚的で言語化が難しいが、ムーミンシリーズのキャラクターならば「こう喋るだろう」というものが確実に存在する。それが今作の翻訳においてうまく表現されていると感じられた。

原作ありきの本作において、それは深く作品を理解しなければ実現できない。きっと、多くの日本のファンにとっても「ああ、これはムーミンだ」と感じられるものとなっているはずだ。

なお、2023年9月21日~24日にかけて、千葉県の幕張メッセにて開催された「東京ゲームショウ2023」にブース出展された際に、桑原氏からお話を伺う機会があった。その際の様子は弊誌の別記事にて紹介しているので、併せてご覧いただければと思う。

【TGS2023】トーベ・ヤンソン氏の世界観が忠実に再現された新しい舞台『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』ブースレポート
「東京ゲームショウ2023」出展タイトル『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』のブースレポートをお届けしよう。ムーミン谷を舞台にスナフキンが活躍する音楽アドベンチャーゲームだ。

素敵なパッケージ版も販売予定

今回ローンチを迎えたSteam、および、Nintendo Switch(デジタルダウンロード版)からは約3ヶ月遅れることにはなるが、2024年6月13日にはNintendo Switch向けにパッケージ版の販売が予定されている。

通常版限定版が用意されており、その内容物は以下のとおりだ。

  • 通常版(4,480円)
    • 『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』本編
    • 追加コンテンツ「大切な思い出」ダウンロードコード(ゲーム内でスナフキンが身につけられるアイテム2種)
    • ペーパーキャラクタースタンド2枚(8体)
  • 限定版(8,800円)
    • 通常版に含まれる内容物
    • 開発の裏側に迫る100ページ超えフルカラーの豪華なアートブック
    • オリジナルサウンドトラックCD
    • オリジナルピンバッジ

形として手元に置けるというコレクション的な側面もあり、特に限定版に同梱されるオリジナルピンバッジなどはムーミンシリーズのグッズとしての魅力も高い。パッケージ版を待って本編をプレイしたいという方にとっては、もうしばらく待つことにはなってしまうものの、それだけの価値があるだろう。

通常版、限定版はいずれも各店舗にて予約受付中なので、確実に入手したい方は予約を検討されてみてはいかがだろうか。


基本情報 スナフキン:ムーミン谷のメロディ
開発 Hyper Games
販売 Raw Fury
架け橋ゲームズ / パッケージ版
配信日 2024年3月8日 / 日本語有り
定価 2,300円(Steam
2,550円(Nintendo Switch

この記事で紹介されているゲーム

スナフキン:ムーミン谷のメロディ

アドベンチャー

RPG

インディー

2024年3月8日
日本語対応
¥2,300
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発売日2024年3月8日
ジャンル
アドベンチャー
RPG
インディー

カテゴリ
シングルプレイヤー
Steam実績
フルコントローラサポート
Steamクラウド
ファミリーシェアリング
ストアページリンク

スナフキン:ムーミン谷のメロディ

スナフキンとなって、ムーミン谷の調和を取り戻す音楽の旅に出発しましょう。豊かな物語を楽しみ、気まぐれで素敵なキャラクターたちと出会いながら、厳格な公園番からムーミン谷を守りましょう。

デジタルデラックスエディション



トーベ・ヤンソンの美しく、陽気で、けれどどこか切ないムーミンの世界を『スナフキン:ムーミン谷のメロディ - デジタルデラックス版』でご体験ください。

スナフキンがいつも持ち歩く大切な思い出の品、帽子に飾る花と考え事をするときにくわえるパイプの2つを持ってムーミン谷を旅しましょう。

厳しい気候から手付かずの自然の絶景まで、北欧の風景にインスパイアされた情緒あふれるオリジナルサウンドトラックをお楽しみください。作曲家のOda Tilsetとアイスランドの人気バンドSigur Rósのコラボレーションが生んだ音色です。

数々のコンセプトアート、見たこともない場所や風景、そしてゲームを開発したチームの思いに触れましょう。キャラクターや世界観、いきものたちの様子など、このゲームに命を吹き込み絵本のように作り上げた技術、哲学、スタイルの裏側に迫ります。

『スナフキン:ムーミン谷のメロディ - デジタルデラックス版』に含まれるもの:
『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』本編
追加コンテンツ「大切な思い出」
『スナフキン:ムーミン谷のメロディ - オリジナルサウンドトラック』
『スナフキン:ムーミン谷のメロディ - デジタルアートブック』


ゲームについて



『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』は、豊かな物語と音楽の旅を楽しめるアドベンチャーゲームです。スナフキンとなって、ムーミン谷に暮らす風変わりで個性豊かなキャラクターたちを助けましょう。趣味の悪い公園がムーミン谷のいろいろなところにでき上がり、自然の風景と調和を乱しています。警察官の気をそらしながら看板を引き抜き、自然にそぐわない像を倒しましょう。ムーミン谷の自然と住民たちの暮らしを取り戻すために力を尽くしながら、厳格な公園番の計画を阻止するのです…。

美しく創り上げられた本格的な北欧のゲームを体験しましょう。トーベ・ヤンソン氏の描く鮮やかで愛されるムーミンの世界ー生き生きとした物語や感情、メランコリックな雰囲気が詰め込まれています。パズルやかくれんぼ、音楽の要素がオープンワールドシステムと融合し、どんな年齢の方も楽しめる心温まる旅へみなさんをご招待します。

素敵な絵本のスタイルが世界を創り上げる


ムーミンの物語の本質を捉えた、想像力豊かで美しい世界に飛び込みましょう。原作となる小説や絵本で描かれている世界が、これまでに見たこともない方法で融合し、『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』へ命を吹き込みます。

アイスランドのポストロックバンド「Sigur Rós」が生み出すメロディと調和の取れたシンフォニーを、一つ一つ体験しましょう。スナフキンとしてハーモニカを使って曲を奏でることで、ムーミン谷の住民たちと友達になることもできます。心を開き、足取りを軽くしてムーミン谷を旅しましょう。

気まぐれで素敵なキャラクターたち


気まぐれで深みがあり、様々な個性を持つキャラクターたちのことを知りましょう。趣味の悪い公園が出来た原因を見つけるだけではなく、ムーミン谷の可愛らしい住民たちと出会う旅でもあるのです。

音楽の旅


地平線に太陽が沈んで温かな琥珀色が映えている草地。野花の香りが爽やかなそよ風と混じり合い、隠された驚きと語られることのなかった物語を運んでくれる場所。帽子を深く被ってハーモニカを持ったスナフキンとして旅をする場所。そんなさまざまなエリアを探索しましょう。ムーミン谷を探索してパズルを解くことで、素敵なひらめきが得られます。

ゲームの特長
  • 素敵な絵本のアートスタイルで描かれた、豊かな物語を楽しめる心地よい旅に出発しましょう。
  • 厳格な公園番と不愉快な公園をムーミン谷から追い出しましょう。頼りになるハーモニカと、ちょっとしたかくれんぼ、そして、旅の途中に出会う友達が助けになります。
  • ムーミン谷に住んでいる50以上の可愛らしいキャラクターと生き物に会いましょう。
  • 物語性を重視したゲームプレイを体験しましょう。トーベ・ヤンソン氏の作品にインスパイアされたキャラクターたちによる、数々の魅力的な物語とクエストを楽しめます。
  • オープンワールドになったムーミン谷を探索し、そこで起きていることを明らかにするために音楽と環境のパズルを解き明かしましょう。
  • Sigur Rósとのコラボレーションにより生まれた、音楽とメロディが作り出す美しい音の風景に浸りましょう。



© Snufkin: Melody of Moominvalley. Developed by Hyper Games. Published by Raw Fury AB. © Moomin Characters ™

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