【TGS2023】骨太なデッキ構築型SFローグライク『Breachway』Selected Indie 80 ブースレポート

朝比奈 / Asahina

2023/09/23

2024/05/26

2023年9月21日~9月24日に千葉県の幕張メッセにて開催されている「東京ゲームショウ 2023(以下、TGS2023)」の、インディーゲームエリア「Selected Indie 80」出展タイトル『Breachway』のブースレポートをお届けしよう。

インディーゲーム開発スタジオ"Edgeflow Studio"が手掛ける本作は、宇宙船を駆り、銀河系を舞台に繰り広げられる、デッキ構築型SFローグライク要素を持ったターンベースのタクティカルストラテジーゲームだ。

今回、TGS2023のブースに出展されている体験版では、体験版専用となる銀河の星系マップを進むことになり、ゲームシステムを解説した丁寧なチュートリアルを経て、そのマップのボス戦までを体験することができた。

体験版にはクオリティの高い日本語が収録されており、本作をパブリッシングする"Hooded Horse"の日本人スタッフもいらっしゃるので、試遊の際には十分に理解してのプレイが楽しめるはずだ。

なお、まだ開発中の内容であり、製品版ではゲームシステムなどに変更が加わる場合もあることはご理解いただきたい。

銀河を股にかける壮大な冒険

本作の舞台となるのは、宇宙に広がる銀河系。『Slay the Spire』や『FTL』にインスパイアされたという本作は、宇宙船を操りながら、デッキ構築型のカードバトルを行うというユニークなゲームシステムとなっている。

探索する星系マップは、ルートを選択しながら1マスずつ進んでいく方式。それぞれのマスではイベントが発生し、敵対勢力となる宇宙海賊との戦闘が発生したり、宇宙船のクルーとの出会いと別れを経験したり、宇宙ステーションに立ち寄って補給したりしながら、最終的に敵のボス艦との戦闘に挑むこととなる。

今回TGS2023の体験版では、ルールのわかりやすさを重視してリニアなルートとなっているが、製品版ではより多彩なルート分岐が選択できるようになるという。

歯ごたえのあるカードバトル

宇宙船同士の戦いとなる戦闘は、ターンベースのカードバトル方式で描かれる。

艦の各所(ハードポイント)には兵装が装備されていて、その持ち場としてクルーが配置されている。それらの武器やシールドジェネレーターがカードとなっていて、その組み合わせがデッキとなるわけだ。戦闘に突入すると、そこからランダムに選び出された手札を使って戦闘を行っていく。

ターンベースではあるが、自身のリソースとカードを扱うためのコストの範囲内であれば繰り返し行動することができ、リソースを使い切るか、任意でターンを終了することで敵のターンとなる。

▲手札を捨てて、山札から引くといったカードバトルの基本もおさえられている。

面白いのは、カードの種類によって攻撃系や防御系など必要なコストが異なり、ターン毎に生成されたリソースを自身で調整して割り振ることができるシステムだ。敵の攻撃に備えて、一旦攻撃に回すリソースを減らして防御に回したり、このターンで敵艦を落とせそうであれば攻撃に全振りもできる。

また、行動を封じる「部位破壊」の概念があり、例えば敵艦本体ではなくシールドジェネレーターに攻撃を加えれば、一定ターンの間バリアを張れなくすることができる。それと同様に、数ターン後に飛来してくる強力なミサイルを迎撃することもできるので、なにを優先すべきかという緻密で奥深い戦略的思考が要求されるのだ。

▲ひとつひとつの戦闘にじっくりと時間をかけて挑むタイプ。

戦闘に勝利すると報酬として、追加のカードと、一定額のクレジット(資金)を得ることができる。カードはそのまま艦の新たな兵装として装備してデッキに加えることができ、クレジットは「宇宙ステーション」のマスで、自艦の修理や、新たなカードを売り買いに使用することが可能だ。

宇宙ステーションはルート上に1~2つしかなく、必ず立ち寄れるとも限らない。確実に耐久値を回復できるので活用したいが、装備も整えたいというジレンマを覚える。

他にも別のマスでは、宇宙を漂う脱出ポッドを回収することでクルーに加わったキャラクターを、追跡してきた他の勢力に引き渡すか引き渡さないかという選択肢が示されるシーンがあり、自身のモラルに従ってもいいし、引き渡して消耗を抑えてもいい。

そうした、さまざまな選択と駆け引きを経て、最終マスのボス艦へと挑んでいくのだ。

実のところ、ここでは紹介しきれない、より細かな要素も存在するので一度の試遊ではすべてを理解することは難しいだろう。本来はじっくりと腰を据えて、繰り返し挑むことでシステムを理解し、最高のエンディングに向けて冒険をしていくこととなる。

本作が完成した暁には、このすばらしい宇宙へと今一度旅立ちたい。

Hooded Horseの躍進に注目

アメリカ合衆国を拠点に、2019年に立ち上げられた比較的新しいインディーゲームパブリッシャーである"Hooded Horse"は、好評を得ている『Against the Storm』や『Terra Invicta』といった、魅力的なストラテジーゲームを中心に取り扱っている。

特に、そのタイトルの多くが機械翻訳ではないクオリティの高い日本語がサポートされており、今後リリース予定のタイトルも含めて、熱い期待を持たれているストラテジーファンの方も多くいらっしゃるのではないだろうか。

今回TGS2023では、インディーゲームエリア「Selected Indies 80」において、本作『Breachway』と、42 Bits Entertainmentが手掛ける『Fata Deum』の2タイトルが個別出展されていた(他タイトルはオンライン出展となる)。

筆者がビジネスデイで立ち寄ったタイミングでは、機材トラブルにより『Fata Deum』はトレーラー出展のみとなっていた。

いつか、Hooded Horseの取り扱いタイトルが一堂に会する、パブリッシャー単独でのブース出展もあるかもしれない。2023年秋以降もリリース予定のタイトルが多数準備されているので、日本からも期待を込めて注目していきたい。

▲2023年3月のPAX East 2023ではショーケースも公開されている。

開発者インタビュー

ここからは、本作について開発チームより伺った内容を併せてお伝えしたい。今回TGS2023では、本作をパブリッシングするHooded Horseの日本人スタッフの方が常駐されているので、ブースに立ち寄られた方はお話も伺いやすいだろう。

【質問】開発を始めたきっかけを教えてください。

本作は『Slay the Spire』や『FTL』にインスパイアされていますが、実は最初からこの形と決めて制作をはじめたのではなく、もともとは単純な1対1のカードバトルでした。開発を重ねることで、洗練されてこの形となっています。

【質問】開発期間は?

開発は2019年にスタートしました。当初はパートタイムでの制作でしたが、現在はフルタイムで開発に取り組んでいます。開発の進捗状況を表すのは難しいのですが、現時点で7割といったところです。

【質問】ボリュームはどのぐらいになるでしょうか。

製品版では10のマップが用意されていて、そこから3つのマップがランダムに選び出されます。つまり、3マップで1つのストーリーとなる予定です。ルート分岐も体験版よりも豊富なので、よりボリュームが感じられるはずです。

【質問】しっかりとしたクオリティで日本語をサポートをしようと思った理由があれば教えてください。

実は、『Breachway』のSteamストアページを公開した直後からのウィッシュリスト登録数が"日本がトップ"だったからです。その後はアメリカに抜かされましたが、2週間ずっと日本が1位という位置にいたことは非常に大きな理由となっています。

筆者注:Steamにおける指標のひとつとして、リリース以前からの「ウィッシュリストへの登録」が大事であることは、予てからアピールされているが、こうして特定の言語のサポートに至る大きな理由にもなることがお分かりいただけるのではないだろうか。

【質問】今後日本語が実装されたデモを公開される予定は?

今後、日本語が実装された形での公開を検討しています。具体的な日程は現時点では出せませんが、可能であればSteam Nestフェスが目標です。

Breachway on Steam
Assemble your crew, load out your ship, and explore the galaxy in this deck-building space roguelike. Your deck is determined by your spaceship’s loadout, mix and match equipment to discover different powerful card synergies, and obliterate your enemies in tactical space battles.
基本情報 Breachway
開発 Edgeflow Studio
販売 Hooded Horse
配信日 2023年予定 / 日本語有り
定価 未定(Steam
基本情報 Hooded Horse
Hooded Horse 公式サイト hoodedhorse.com
Hooded Horse 公式X(旧Twitter) @HoodedHorseInc

この記事で紹介されているゲーム

Fata Deum ファタ・デウム

シミュレーション

ストラテジー

2024
日本語対応

Against the Storm アゲインスト・ザ・ストーム

シミュレーション

ストラテジー

2023年12月9日
日本語対応
35%¥2,587

FTL: Faster Than Light

シミュレーション

ストラテジー

インディー

2012年9月15日
日本語対応
¥980

Breachway ブリーチウェイ

ストラテジー

RPG

シミュレーション

2024年9月27日
日本語対応

Slay the Spire

インディー

ストラテジー

2019年1月24日
日本語対応
66%¥952

Terra Invicta テラ・インヴィクタ

ストラテジー

早期アクセス

シミュレーション

2022年9月26日
日本語対応
25%¥3,735
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発売日2022年9月26日
ジャンル
ストラテジー
シミュレーション
早期アクセス

カテゴリ
シングルプレイヤー
Steam実績
Steamクラウド
ファミリーシェアリング
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ストアページリンク

Terra Invicta テラ・インヴィクタ

XCOMの傑作MOD「Long War」の開発が贈るSFグランドストラテジー。エイリアンの侵略により、人類は異なるビジョンとイデオロギーを持つ7つの派閥へと分裂してしまった。選択した派閥を率いて他国を支配し、太陽系全域へと勢力を拡大せよ。あらゆる戦術を駆使して敵艦隊を打ち破れ。

HOODED HORSEの他のストラテジーゲームもウィッシュリストに加える

https://store.steampowered.com/app/2432860/MENACE/


ゲームについて

その日は、突如としてやってきた──この星に地球外生命体の探査機が接近していることが判明したのだ。エイリアンによる勢力は人類の気付かぬうちに氷で凍てついたカイパーベルトの彼方まで辿り着き、侵略に向けて準惑星の採掘を始めていた。

地球上に存在する国々が「エイリアンの襲来」に団結して対処ができずにいる中、同じ志を持つ政治・軍事・科学といった各分野のリーダーたちは国籍を超えた多国籍チームを結成して、秘密裏に連絡を取り合うため、「カバートチャネル」を構築し、密かに対応策を練っていた。そのような状況で地球上では、希望、恐怖、欲望に駆られた派閥が次々と台頭し始める。エイリアンたちの目的も定かではないまま…

プレイヤーが操作するのは、次の派閥のいずれかだ。
  • 「レジスタンス」:国家間で同盟を組み、組織的な防衛を行う者たち
  • 「人類優先」:エイリアンとそれに同調する人間の駆逐を最優先とする者たち
  • 「しもべ」:エイリアンを崇拝し、彼らが地球上のあらゆる問題を解決すると信じている者たち
  • 「保護領」:人類全滅を避ける唯一の手段として、交渉による降伏を提唱する者たち
  • 「アカデミー」:エイリアンの到来が、星間同盟を結ぶ好機だと期待している者たち
  • 「イニシアティブ」:破壊と混乱の中で、利益を得ようと画策する者たち
  • 「プロジェクト・エクソダス」:巨大宇宙船の建造により、太陽系から脱出を図る者たち




遠く離れた地での異変、謎の墜落現場、そして急増する失踪者情報──人類とエイリアンとのファーストコンタクトは、我々の見えないところで起きていたのかもしれない。現地のエージェントが目撃情報を検証し、科学者が新たな研究分野の開拓に奔走する中、プレイヤーは次第にエイリアン襲来の真相を知ることになる。

  • 初期の目撃情報やUFOの墜落現場に始まり、巨大生物やロボット軍団を駆使して、非道の限りを尽くすエイリアンたち。プレイヤーである君はすぐに、敵は対立する他の派閥だけではないことに気付くだろう。地球上で勢力を拡大するエイリアンたち。彼らの動向を探るうちに発生するイベントは、プレイヤーに厳しい選択を迫る。エイリアンの起源、この星に襲来した目的、その謎を解き明かすのだ。当然、君が「人類優先」派閥に属し、エイリアンの抹殺だけを考えていなければの話だが…
  • 本作では他の派閥と協力及び競争をしながら、世界規模で研究を進めるシステムが実装されている。また研究の成果を共有することで、民間による開発プロジェクトもアンロックされる。プレイヤーは研究ウェイトを割り振って、自らの派閥における研究に集中させることもできるが、その代償として多国間で行っていた研究は停滞することとなる。さらには、他の派閥に国際研究の方向性を決定づけられるリスクもあるだろう。油断すると、「しもべ」や「イニシアティブ」のような派閥が「推進システム」や「兵器開発」だけではなく、社会の管理方法を確立させる方向に世界を誘導する可能性がある。




物語は地球上からはじまり、プレイヤーである君は自らが選択したイデオロギーに傾倒する影の組織の指導者となる。エイリアンの襲来は目前に迫っているが、最初に対峙しなければならない敵は(おそらく同盟相手も)他の派閥──つまり、他派閥の人間となるであろう。

  • 同じイデオロギーによって結ばれている自らの派閥を導け:『Terra Invicta』には、一般的なストラテジーゲームと大きく異なる点がある。それは「選んだ国家の色で、マップが塗りつぶされないこと」だ。君が導くのは領土によって定義された国家ではなく、自らの派閥である。各地域に存在する軍事、経済、政治的優位性を持つ「コントロール・ポイント」を他派閥と競い合いながら奪い取り、影から支配を拡大するのだ。
  • 地球を制する者が太陽系を制す:勢力下にある国を利用して、他の派閥に代理戦争を仕掛けろ。自身の目的に最も合う形で国を統合・分割し、戦略的に支配を拡げるのだ。各地域は教育レベルや治安、GDP、格差などの設定が詳細に決められている。莫大な富や軍事力を持つ地域を支配することができれば、国際的な発言力は高まるであろう。しかし、ロケット発射施設のあるエリアを確保できなければ、太陽系を巡る戦争に打ち勝つことはできない。
  • 世界中、さらには宇宙に派遣された政治家、科学者、工作員から成る評議会を通じて、自らの野望を実現せよ。評議員の初期能力は経験値による成長のほか、諜報機関や大企業などの強力な組織を傘下に入れることでも向上していく。ベテランの指揮官は、評議会の指揮下で戦術チームを率いる。また、経験豊富な外交官はエイリアンに対抗するための資金確保に尽力してくれるだろう。
  • 同じ志を持つ人々や政治家を探し出し、対立するイデオロギーの信奉者が自らの考えを改めるような行動をせよ。世論は複数の要素で構成されている。たとえば、「しもべ」派閥の『エイリアン崇拝』と「保護領」派閥の『交渉による降伏』という考え方は、エイリアンを支持する点でほぼ意見が合致しているかもしれない。しかし、エイリアンは撃退可能であることを示唆するようなイベントが発生した場合、「保護領」に属する者が「エイリアンへの抵抗は、現実的な選択肢だ」として考えを改める可能性がある。




『Terra Invicta』は、現在の地球と宇宙ストラテジーゲームに登場する強大な星間帝国を結び付けたゲームだ。太陽系は300を超える小惑星、衛星、惑星が常に動き回り、刻々と変化を続ける戦略的なマップとなっている。人類が太陽系を植民地化するための第一歩を踏み出せるかどうかは、プレイヤーの手腕次第だ。

  • 造船所や燃料基地としての宇宙ステーション、高度な資源を獲得するための採掘所、そして研究・建設施設となる基地の設立など、地球の枠を飛び越えて自らの派閥を発展させよ。本作『Terra Invicta』では、太陽系の戦略的地理に焦点を当てている。宇宙とは命令を受けたユニットが単に行き来するだけの孤立した星の集まりではない。小惑星、衛星、準惑星、巨大ガス惑星、その他の天体から構成される多様な変化に富んだ空間なのだ。これらの星々は味わい深い景観を作り出し、あらゆる場面で戦略的価値を生み出す可能性を秘めている。
  • 天体の公転によって、広大なマップは絶えず変わり続けている。同様に、宇宙ステーションや前線基地も常に移動しているため、それに応じた計画を立てつつ、変化する環境に柔軟に適応しなければならない。たとえば、木星の衛星にあったコロニーから遠く離れたエイリアンの軍事拠点や「イニシアティブ」の私掠基地が、気付けば間近に迫っていても不思議ではない。




本作は「未来で実際に起こりうる可能性」をテーマとして探求している。たとえば、「火星を植民地としたらどのようになるのか」、「どのようなエンジンが宇宙船の動力源となりえるのか」、「宇宙における戦争や植民地化はどのように行われるのか」といったことが例として挙がる。「小惑星16サイキ」に豊富な金属資源が埋蔵されていることに気づいたプレイヤーは、もしかするとそこに採掘基地を建設するかもしれない──そして君は、現実の世界においても、NASAが同様の理由で「サイキ」ミッションを計画していることを知ることになるのだ。

  • 宇宙を探検し、最終的に植民地化するためには、多くの資源を獲得しておかなければならない。例を挙げるならば、生命維持や推進剤のための水、製造のための金属、駆動装置や兵器のための核物質などである。初期段階ではそのような資源は地球上でしか集められず、大気圏を脱出するのに必要なロケットの生産コストに悩まされることになるだろう。しかし、時間が経つにつれて、小惑星における採掘など、資源の現地調達という手段を選択できるようになる。
  • 本作『Terra Invicta』における宇宙船のデザインは、科学的仮説とハードSF作品から影響を受けており、両方の良い部分を取り入れている。様々な船体に武器や駆動装置などのモジュールを搭載し、燃料や機動力などの性能を組み合わせて、自分だけの船を設計することが可能だ。
  • 戦術的戦闘はニュートン物理学のリアルシミュレーションによって、設計されており、3D空間における推進力と操縦は自機の火力と同程度に重要となる。ミサイルを発射し、迎撃システムを用いて飛翔体を撃破せよ。機体を加速させ、敵を射程圏内に入れたり、ラジエーターを格納し、放熱を犠牲に敵の弾丸に対する防御性能を高めたりなど、様々な難しい決断に迫られることになるだろう。


本作『Terra Invicta』は、MOD作成によるサポートを受けることを念頭に開発されております。もしプログラムやコードに関する知識がなくても、簡単にゲーム内で利用していただくことができます。「太陽系と地球」──二つの舞台を持つこのシミュレーションゲームが、MOD制作をされる方々のクリエイティブな発想を実現する場としてお役に立てることを願っております。