小惑星衝突が迫り、生きる望みを絶たれたソウルの街を描くパズルアクションアドベンチャー『Goodbye Seoul』【BIC Festival 2024】

Masa Kei

2024/09/06

2024/09/14

韓国のプサンで毎年開催される「Busan Indie Connect Festival(BIC)」。今年は8月16日~18日までBEXCOをオフライン会場として展示会が行われた。

また、BICではオンラインイベントが並行して開催され、8月9日~30日まで公式サイトを通じて出展作品の情報に触れることができた。

부산인디커넥트페스티벌 2024
부산인디커넥트페스티벌 2024

Goodbye Seoul』(グッバイ・ソウル)は、小惑星衝突による地球滅亡まで6か月となった韓国の首都ソウルで、少女ラヨンとなり、宇宙に避難する極秘プロジェクトの手がかりを求めて、荒廃した街を駆け抜けるパズルアクションアドベンチャーゲームだ。Steamでデモ版が公開中。

開発元JINO Gamesは、個人開発者JINO氏のインディーゲーム開発スタジオで、パブリッシャーは『SANABI』などの販売を行うNEOWIZが手掛ける。

本作はBIC Festival Awardsの一般部門で最高の評価を得てグランプリを受賞した。さらに、優れたアートのゲームに与えられる「Excellence In Art」を受賞して二冠を達成している。

Steam:Goodbye Seoul
「Goodbye Seoul(グッバイ・ソウル)」は、勇気を絆を通し荒廃した都市で希望を求め進むナラティブパズルアドベンチャーゲームです。 地球滅亡まで残り6か月。全てを放棄したソウルの巨大な闇の中で、隠された宇宙避難プロジェクトの真実を、ラヨンと共に明かしましょう。

世界の終わりに直面した都市を描くピクセルアート

本作の魅力は、絶望的な危機の中にあるソウルの街と人々を描いたドラマ性にあると感じた。伝統的な横スクロールのピクセルアートゲームは、やはり世界観やストーリーを表現するのに向いたジャンルなのだろうとあらためて思う。

公開中のデモ版の範囲では、足場となる物を押して動かしたり、電気のスイッチをオン・オフしたりして進路を確保するパズルがある。このパズルだけを見ると目新しくはないが、廃墟や工場といった場面に馴染んだパズルであり、非力な少女のラヨンが危険に勇敢に立ち向かっていく姿を表現するのに一役買っている。

終わりゆく世界で少女はチャンスを掴めるか

物語は、ラヨンがアパートを出てハンガン(漢江:ソウルの中心を流れる河川)に向かう場面から始まる。大家の女性に呼び止められて口ごもり、川に身投げするつもりだということを明かす。小惑星が衝突するまでまだ6か月あるが、ラヨンは生きる意味を見出せず、「もう、終わりにしたい」と言う。

ハンガンに向かう途中、放棄された車両が並ぶ道路や、止まった電車を通り抜けて進む。パニックが過ぎ去った後の、人気がなくなった街をラヨンは駆け抜けていく。

そして、ようやくハンガンにたどり着いたとき、残された痕跡を目にしてショックを受けるプレイヤーもいるだろう。自ら命を絶とうとして橋の欄干に立つまでの描写に心を揺さぶられ、序盤から引き込まれた。本作は、黙って孤独に進んでいくラヨンの表情こそ見えないが、細かく描き込まれた背景に強く訴えられるものがあると感じた。

その後、ラヨンはハンガンの橋に倒れていた軍人を助ける。彼は命が尽きる前に、政府が宇宙に避難所のようなものを作っているという極秘の計画を明かす。その鍵となるものをラヨンに託し、集結地まで運んでほしいと言う。半信半疑ながら、ラヨンはこの「宇宙避難プロジェクト」の手がかりを追って、次の目的地に向かうことになる。

危険な工場を抜けて「集結地」へ

序章が終わり、ここからしばらくは廃墟となったビルや工場を通っていく。スイッチでシャッターを開閉したり電流を止めたりしつつ、カゴ台車を動かして足場にするパズルが何度か出てきて、ゆるやかに難易度が上がっていく。

集結地に着いてから少し先に進んだところでデモ版は終了。また次の目的地へ、というようにラヨンの旅が続いていくのだが、デモ版の最後の会話によると、イテウォン(梨泰院)地区に行くことになるようだ。

ゲームを通して眺める韓国文化

筆者が注目しているのは、本作から現代の韓国文化が感じられる点だ。韓国のゲームには、物語の舞台を日本に変更するという意味の「ローカライズ」が施されることもあった。韓国が舞台のままリリースされたインディ―ゲームはインラタクティブムービーやホラーゲームなどでいくつか前例があるが、『Goodbye Seoul』のようにシリアスな人間ドラマをピクセルアートで描き、特定の都市(ソウル)の地区それぞれの特徴を表現しているのは珍しい。

デモ版の続きで向かうイテウォンは、外国人が集まる国際色豊かな地区でクラブなども多い繁華街だ。人気のない廃墟から一転して、人が密集する地区に舞台を移し、そこでラヨンは人々が世界の終わりまでどう過ごしているかを目にすることになりそうだ。

翻訳についても触れておくと、操作方法やストアページのテキストなども含めて隅々まで監修することは難しかったようで、筆者がいくつか見つけたエラーに関してはフィードバックを送っている。

とはいえ、本作の会話シーンは申し分ないほど自然に翻訳されており、雰囲気をよく伝えていると感じた。海外のストーリーアドベンチャーゲームを良質な翻訳で楽しめるというのは嬉しい限りだ。ぜひデモ版を遊んでみてほしい。


基本情報 Goodbye Seoul
開発 JINO Games
販売 NEOWIZ
配信日 未定 / 日本語有り
定価 未定(Steam

この記事で紹介されているゲーム

SANABI

インディー

アクション

アドベンチャー

2023年11月9日
日本語対応
¥1,520

Goodbye Seoul

インディー

アクション

アドベンチャー

Coming soon
日本語対応