本稿は事前にレビューキーをご提供いただき、執筆しています。
『深夜のラーメン』は、深夜にだけ開店するラーメン屋台を舞台に、お客との対話を通じて彼らの心の内を描くナラティブなビジュアルノベルゲームだ。台湾のゲーム開発スタジオ"Cointinue Games"が手掛ける。
そこを訪れる客層はやや多国籍ながらも、舞台となる屋台や背景の街並みは、そこが日本だと言われても違和感のない描かれ方をしている。異国文化に触れられることもまたゲームの醍醐味ではあるが、こうした馴染みのある雰囲気はとっつきやすい。本稿では、そんな本作の内容と魅力についてご紹介しよう。
ラーメン屋台の灯がお客の訪れを待つ
どこかの都市の片隅で、いつも深夜にだけ開店するラーメン屋台。プレイヤーはその屋台の店主と、見習いスタッフのほむらとして、毎晩のように店を訪れる馴染みの常連客や一見のお客を相手にラーメンを提供していく。
お客はもちろんラーメンを食べに来ているのだが、ここは屋台という距離感の近い特殊な空間。彼/彼女たちが心の内にある悩みを吐露することがあれば、対話によってそれを癒やすことも大切な役割だ。
本作のゲームシステムは、グラフィックスとしての動きや表現は控えめに、主にテキストによって描かれた物語を読み進めるノベルゲーム、または、ビジュアルノベルと呼ばれるもの。
主軸となるのはテキストを読むことで、お客との会話の中で生まれるショートストーリーを楽しんでいくものとなるが、お客の注文に応じて「ラーメンを調理する」過程も挟んでいく構成となっている。
ラーメンを振る舞って会話に耳を傾けよう
そういうわけでまずはラーメン作りから。屋台のカウンター越しにお客からの注文を受けると「調理パート」の開始。ミニゲーム方式になっていて、スープ・麺の硬さと量・トッピング・調味料をレシピに沿って調理すれば完成だ。
お客の好みで調理内容が変わったり、ラーメン以外のメニューを手掛けたりすることもあるが、注文内容と要望はメモが表示されているし、時間制限もないので焦らず進めれば問題ない。中にはミニゲームが本格的過ぎてゲームの主軸がブレてしまう作品もあるが、本作はその点をケアしている印象だ。
ラーメンが無事完成したら、飲み物など他に注文のあった品も添えてひとまず調理パートは終了。空腹が満たされれば会話が弾むこともあるからか、そこからはラーメンに舌鼓を打ったお客との「会話パート」ということになる。
ここを訪れるお客は常連客の老人、仕事に疲れたサラリーマン、道に迷った女子高生などさまざま。常連客などは訳知り顔だが、皆それぞれがなにがしかの悩みや事情を抱えているようだ。
本作は、漫画を原作とした実写テレビドラマ版『深夜食堂』や、『VA-11 Hall-A』『Coffee Talk』にインスパイアされたカウンター越しのヒューマンドラマ的な作品となっていて、お客との対話を進めていく中で互いの内面が掘り下げられていく。
この深夜の屋台がどういう場所で、ここを訪れる者たちがどんな境遇にあるのか。あくまで屋台の中でだけで展開されていく小規模な物語なのだが、意味ありげなセリフが端々に見え隠れするところが想像力を刺激する。一篇の短編小説を読むような感覚で、ぜひご自身で読み進めてみてほしい。
ところで、筆者が気に入ったのはゲームの内容はもちろんだが、耳に心地よいチルでメロウなLo-fiサウンドも含まれる。ストアページ上の情報によれば、Purrple Catが手掛けたフリー楽曲が使われているとのこと。
洒落たバーカウンターではないが意外と屋台にもマッチしているので、作中と同じ時間帯に合わせてリラックスした雰囲気で本作をプレイしてみるのもいいだろう。もっとも、美味しそうなラーメンが深夜の飯テロになってしまうかもしれないが…。
そんな『深夜のラーメン』が気になった方は、Steamにて体験版が配信されているので、まずはそちらから手にとってみてはいかがだろうか。
基本情報 | 深夜のラーメン |
---|---|
開発 | Cointinue Games |
販売 | Cointinue Games |
配信日 | 2024年7月24日 / 日本語有り |
定価 | 1,500円(Steam) |